7年前の東日本大震災は、日本列島が地震・津波をはじめとした様々な災害の多発地帯であることを我々に知らしめました。一方で、日本には災害が多発する故に、過去の災害における様々な痕跡や、先人達の記録が数多く残されています。東日本大震災以降の災害研究を展開する上で、これらの日本における災害の歴史を紐解くこと、さらにこれらの災害の歴史を伝える多様な資料に注目が集まっています。
東北大学では2012年に災害科学国際研究所を新設し、実践的防災学の構築を目指して、文系と理系の研究者による文理融合型の災害研究を展開してきました。また、東北大学は2017年6月に指定国立大学の認定を受け、世界トップレベルの研究拠点を目指す4領域として「災害科学」を掲げています。さらに、災害で被災した歴史資料の保全活動を積極的に展開するため、2018年1月に東北大学と人間文化研究機構・神戸大学との間で連携協定を締結し、全国規模で歴史資料の保全と活用をはかる歴史文化遺産ネットワーク事業を開始することにしています。
第2回目となる今回のシンポジウムでは、歴史学における災害史研究を先駆的に実践されている北原糸子氏に、1896年に発生した明治三陸津波と、災害直後の被災地を踏査した山奈宗真について講演をいただきます。次いで、2011年東日本大震災、2015年関東・東北豪雨、2016年台風10号被害における被災史料の保全や過去の災害と向き合いながら研究を実践してきた歴史学、地理学、河川工学の研究者5名による報告をおこないます。さらに登壇者全員によるパネルディスカッションによって、日本に残る膨大な先人達の災害の体験や教訓が含まれた様々が記録と、そこに記される災害の様相や地形改変といった自然の記憶から、我々は何を学び、将来の防災へ繋げるのか、これからの災害科学の展開について議論をふかめていきたいと思っております。