佐藤 大介 （さとう だいすけ）

日本列島の地域社会に残されている古文書その他の歴史文化遺産は、それを生み出してきた社会・経済・文化環境の変化、さらには近年続発する地震や風水害により消滅の危機に瀕しています。一方で、それらの保全を通じて、モノ自体の保全を越えた多様な社会関係が生み出されています。宮城を拠点に行ってきた活動を踏まえ、歴史文化遺産保全のための社会関係の構築と、その可能性について検討します。

蝦名 裕一（えびな ゆういち）

日本では、江戸時代を画期として膨大な文書が作成され、世界にも稀な文書文化が形成されてきました。これらの古文書は土蔵の片隅や襖の裏張りとして、今もひっそりと眠っていることがあります。その中には自然や災害と向き合ってきた先人達の経験や教訓が数多く残されており、現代の災害研究や将来の防災について重要な情報となる可能性があるのです。

川内 淳史（かわうちあつし）

「歴史文化遺産（資料）」とは何か？。過去から現在に至るまで、私たちの社会の歴史や文化を示すモノが歴史文化遺産となり得るのであれば、私たちの身の回りには驚くほど多くの歴史文化遺産が残されています。日常的にはそれほど意識することのないこれらの歴史文化遺産は、私たちの社会のなかで人々が生きてきた証そのものであり、現在の私たちの「生存」そのものを支えています。こうした歴史文化遺産を未来へと伝えるために、この事業を通じて多くの方々とつながり、考えていければと思っています。

柳原 敏昭（やなぎはら としあき）

東日本大震災を前後して、宮城県では、普通はめったに見つからない中世史料の発見が相次いでいます。白石市教育委員会と宮城資料保全ネットワークとの協力によって紹介された白石市の遠藤家文書には、戦国大名伊達氏にかかわる書状、室町時代の公家日記断簡（『建内記』）など約100点が含まれていました。多賀城市でも足利尊氏・斯波義将の文書が見つかっています（「天童家文書」）。これらの調査に参加させていただきましたが、大災害と大発見との隣り合わせに、思いは複雑です。

藤澤 敦（ふじさわ あつし）

考古学が専門ですが、文化財保護行政や保存科学についても勉強してきました。最近は、震災遺構や文化財などの３次元計測と、それの活用に取り組んでいます。東日本大震災では、主に博物館・史料館などの考古資料のレスキュー活動に参加してきました。所属する総合学術博物館には、古生物資料などのレスキューに取り組んできた地学系の研究者もることから、総合的な歴史資料などの保全のための講座を担当することになります。

木村 敏明 （きむら としあき）

インドネシアで地震被災地の人々が様々な宗教団体や行事に励まされている姿を目にして以来、宗教と災害復興の研究に関心をもつようになりました。日本でも祭礼や芸能などが被災地でもつ意味や役割について研究していきたいと考えています。

加藤 論（かとう さとし）

日本大震災をはじめとする、さまざまな災害が発生している中、地域の歴史資料の保全、また公文書をはじめとするアーカイブズの保存や公開により注目が集まってきています。私の専門は歴史学とアーカイブズ学で、これまで両方の分野を架橋する研究や活動を行ってきており、レスキュー活動にも参加してきました。
また、震災以降日本ではデジタルアーカイブの概念も広がり、史資料の継承や活用のあり方も様々に検討がされてきています。
この事業でもさまざまなステークホルダーとのネットワークを築きながら、分野の垣根を越えた取り組みをおこなっていきたいと思っています。