イベント情報

情報更新日 : 2018年6月25日

【イベントレポート】シンポジウム 『歴史が導く災害科学の新展開II -人の記録、自然の記憶-』を開催しました。

6月16日(土)、東北大学災害科学国際研究所多目的ホールにおいて、シンポジウム「歴史が導く災害科学の新展開Ⅱ―人の記録、自然の記憶―」を開催いたしました。このシンポジウムは、東北大学と人間文化研究機構、神戸大学の連携による歴史文化資料保全の大学・共同利用機関  ネットワーク事業の一環として、同事業東北大学拠点及び災害科学国際研究所が主催となって開催されました。今回は、歴史学の中にあって歴史災害研究を牽引してきた北原糸子氏から講演をいただくとともに、歴史学、地理学、地盤工学の研究者による報告とパネルディスカッションが行われました。

 北原氏の講演では、1896年の明治三陸地震津波の直後、三陸沿岸を踏査した山奈宗真の調査活動を題材に、彼の調査が被災地の復興を目指して実施されたものである事を明らかにするとともに、この調査に同行した後の水産学者伊谷以知二郎について新たな考察を展開しました。

 研究報告では、古絵図・古地図を活用して復元した歴史地形を用いて災害を研究する蝦名報告、2016年の台風10号による岩手県岩泉町被害について、地盤工学と歴史学の連携により水害発生の状況を明らかにした森口報告がおこなわれました。高橋報告では東日本大震災の被災地の過去100年間の土地利用を地理学的に分析し、その変化の中で災害リスクが充分に検討されてこなかった事を指摘しました。次いで災害被災史料の保全とそこから始まった災害 研究として、川内報告では東日本大震災による津波で被災した史料の保全作業から近代の大船渡湾沿岸の開発を明らかにし、添田報告では2015年の関東豪雨における鬼怒川流域の 被災史料レスキューで救出した猪瀬家文書から、歴史上何度も水害を受けてきた地域の歴史を明らかにするとともに、「惣囲堤」と呼ばれる堤防が客土をもたらす洪水の侵入を想定して建設されている可能性について述べました。

 これらの講演・報告をうけたコメントとして、菊池氏は海岸林の形成などが単なる防災ではなく地域住民の生活と深く結びついた共有林であった歴史に着目する必要があること、また 加納氏は歴史資料の研究成果を普遍化する手段として現在取り組んでいる「みんなで翻刻」プロジェクトについての紹介がありました。

 今村文彦災害科学国際研究所所長のコーディネートによって登壇者全員が参加したパネルディスカッションにおいては、文理融合型の学際的災害研究における課題や、地域史と災害史の結合させることで新たな地域の姿が見える点に議論が及ぶとともに、北原氏からは「災害文化」を掲げた研究事業に参加し、そこで学際的な研究が展開した経験を述べられ、今日の災害科学国際研究所においても多様な研究分野が連携した日本の「災害文化」の研究が展開することへの期待が述べられました。


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